2020年11月18日
「密」な中からこそ生まれる美味しさ。ボジョレーヌーボーのこと

2020年のボジョレーヌーボー4種

11月18日深夜12時はボジョレーヌーボーの解禁のとき。
ボジョレーヌーボーが好きだなんて言うと、一部のワイン通は顔をしかめる。
赤ワインの楽しみはタンニンの渋みにこそあると考えている人には、軽くさっぱりとした飲み口が気に入らないのだろう。
確かにサシの入った高級和牛のステーキに合わせると、ものたりない。だが、軽いつまみとの相性は抜群。ナッツや乾き物!と赤ワインという組み合わせも成立する。パンケーキと一緒に飲んでも悪くない。
なぜそうなるのか。秘密はボジョレーヌーボーの製造工程にある。ブドウを収穫してから早く飲めるようにするためには、樽やタンクで熟成を待っていたのでは間に合わない。
そこで登場するのがマセラシオン・カルボニック(炭酸ガス浸潤法)と呼ぶワインの味を補正する技術。
収穫したブドウを潰さずに、タンクの中に入れて密閉すると、下の方に入れた果実は押し潰され果汁が流れ出し発酵が始まる。密閉されているので、発酵で発生する炭酸ガスがタンクの中に充満する。私は潰れていないから大丈夫よなんて、高みの見物でいた上層部のブドウたち。充満した炭酸ガスに後押しされて、皮の中に含まれる酵素が働き発酵が始まるというもの。密になるのがいい場合もあるわけだ。
1週間前後発酵させたら、果汁を搾り、あとは通常の発酵過程と同じように仕上げる。タンニンを含む果皮や種と一緒にいる時間は短い。渋みが少なく、すっきりとしたワインができる理由はここにある。
タンニンは決して悪者ではない。ワインの酸化を防ぐ役割を果たし、奥の深い味わいを演出する。高級な赤ワインはタンニンがいっぱい入っていると言って間違いではない。長い時間をかけて、瓶の中で他の物質と結合、澱(おり)と呼ぶ塊となって底に沈んでいく。渋みは少なくなり、風味は残る。できたばかりのオーパスワンが手に入ったと言って栓を抜いてはいけない理由がここにある。
ボジョレーヌーボーはフレッシュさが命。高級ワインはしばらく眠っていてもらうのがいい。カジュアルに陽気に、でも密になるのはマセラシオン・カルボニックのタンクだけでいいよねと、オープンエアのカフェテラオで楽しもう。
タンニンが少ないと言ってもある程度保存はできるが、仕入れたヌーボーは年内に飲み切るつもりで10本だけ用意。あとは店主同様、熟成した大人の味をお楽しみください。

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